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いけばな歳時記 季節の節目に出会う花!
お正月のいけばな お題「葉」
2010年12月30日(木) spectator:7610
- いろいろな葉のかたち
今年も数日で終える。過ぎてしまえば一年はあっという間だ。
きっと人生もそうなのだろう。
嵯峨御流では、毎年「御題花」をいけている。
今年の御題は「光」であった。
果たしてこの一年は光り輝いた一年であっただろうか。
平成23年の御題は「葉」である。
「万年青」(おもと)の葉を添えていけてみた。
花材:若松、菊、千両、万年青。[御題花器] 花材:若松、菊、千両、万年青、オンシジューム。
一年の計は元旦にあり。
正月の花はキリッとした立ち姿にしたい。
我々を優しく楽しませてくれる美しい花は、葉で作られる養分で作られる。
また、花もその要素となる花びらや雄しべ雌しべも、またある種では茎までも葉が変形してできたものである。
葉はソーラーパネルと養分を精製する工場の機能をもっている。
その仕組みとなる光合成は光と二酸化炭素を取り入れ、養分と酸素を生産する。
養分を作りだすことができるのは地球上唯一植物だけである。(生産者)
動物は植物を食べ物として摂取し、また酸素も植物があって供給される。
植物から始まる食物連鎖の頂点に我々人類が存在しているのである。
いかなる動物も植物の存在があって自らの生存を可能にしている。(消費者)
その植物に対する畏敬の念は古来自然発生的に起こったものであろう。
それが宗教心の端緒となったことも想像に難くない。
我々の暮らす日本の美しい四季は春夏秋冬の区別がはっきりしていて、先人の努力もあり美しい景色、景観を季節ごとに見せてくれている。
この日本の美しい景色から、日本的な情緒や繊細な表現力が醸成されて日本文化が発展し、その時代と共に開花してきた。
その原点にあったのが植物であり、それらを育て養ってきた「葉」の存在ということになる。
私は花をいけている。花を生けるにつれ葉の扱いの重さに気付く。
いけばなには「葉組」という手法がある。葉を組み直すことでよりその植物の本質を引き出そうとする手法である。
そのためには、その植物の出生を見極めなければならない。そうすることで自然の「ことわり」が見えてくる。
自然の摂理を無視していけても「いけばな」になりえないことがある。
オブジェとしての「モノ」化した植物になり、単にオモシロイで終わってしまう。
秋の紅葉の名所に行くとその美しさに圧倒されるが、はらはらと散る紅葉も風情がある。
葉の付け根には落葉するためのセンサーやスイッチがあるのだという。
春の新芽の瑞々しさ、夏の盛りに繁茂する木々の葉、そして落葉のメカニズムと、一年を通じて植物は多彩な表情を見せる。
そして、完全循環型の仕組みを持ち続けて何億年もの間に進化してきた植物。
そこから学ぶべきものはまだまだ計り知れないものがある。
いけばなは生けた瞬間の瑞々しさが変化してゆき、やがて枯れてゆく。一年も春から冬を繰り返す。
自然から毎年生きることと死ぬことを教えられて生かされている。
来年も新らしい新鮮な気持ちで実り多い年にしてゆきたい。
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