きざし11
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来年のカレンダー
2011年12月12日(月) spectator:5874
- 宮崎県青島の「ビロウの森」の島
- 青島のビロウ繁る森
画像:九州がんセンター 癒し憩い画像データベース http://iyashi.midb.jp
ウラジオストク日本センターから来年のカレンダーに載せるいけばな作品の依頼があった。
カレンダー掲載はもう3年来になる。
来年は良い年になるようにと願いを込めた作品を選んでみた。
その題を「きざし」とした。
九州、宮崎県の青島に全体を覆うように自生するビロウの森でなる小さい島がある。
そのビロウの大きな葉は暑い日差しから木陰を作り命を育む多様な動植物たちが生きてゆく環境を作りだしている。
また、自らは落下した実がわずかに育つための条件が整ったものだけが百年もの長い年月をかけて次の時代の森の一員となって育つという厳しさを持っている。
そのビロウヤシの葉を主題にしていけた作品を選び送った。
- ビロウと同じヤシ科のシュロの葉に積もる雪
暗い背景に白く輝く漂白したビロウヤシに希望の光をイメージし、そのなかからほとばしる人々の想いを黄色いオンシジュームやピンクのオリエンタルリリーなどで表現した、
人間の営みにおいて様々な植物を育てそれらの種を守ることで文明が存続し文化が創り出されてきたのは確かなことだ。そこには生きることへの感謝と慈悲の心が自然のなかで培われてきた。
- 白く晒したビロウの葉を使った作品:高さ2.2m
先人はその原点を植物同志や植物と動物の思いやりともいうべき関係のなかにしっかり観ていたのである。
海の孤島を覆う青島のビロウの森にもその典型を観ることができる。
人は近年、近代化が進む中で抱えきれない矛盾を作りだしてきた。
現代がかかえるそういう不条理は不自然な調和による歪みが科学の進歩とともに人間と自然の関係を乱してきたことにある。
自然から学ぶことの第一は、余計なものは作らず、残さないという智恵だ。
それが再生可能な種の生命の循環を可能にしているのだ。
原発のような人間が制御不能な効率最優先の不完全な代物がいかに我が国のこの美しい自然とともに人々の生活をも根こそぎ破壊してしまったかという深刻な経験を今年この国は体現した。
高度の技術の元となるコンピューターが席巻する社会における科学文明の進歩は際限なく便利さを追求することと引き換えに実は社会を煩雑にしただけで人間にとってほんとうに大事なものをいくつも捨ててきてしまった気がしている。
人間は未だ大自然の智慧を学べるだけの能力を持てないでいる。
もうこの辺で未来に希望を持てるような生き方に我々自身変えていかねばならないのではないか。
もう一度生き方を見直してみよう。
来年の目標に無駄なものは捨てるという勇気を持つことをあげてみたい。
生活をシンプルにしてみる。
そして自然ともっと近づくことだ。
そうすればきっと何かが変わるだろう。
ビロウヤシがそう言っているかのように私には聞こえたのである。
- 2012年カレンダー(ウラジオストク日本センター制作)
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