秋の三都旅行
いけばな行事 人の和が次の大きな輪を創る!
ロシアの日本文化愛好家と行く ~秋の京都・奈良・東京・三都旅行~
2010年11月20日(土)~28日(日) (3分) spectator:6172
- 京都,東福寺通天橋の紅葉
美しい日本の秋。平城京遷都1300年を記念して日本の三つの都を訪れる旅行に、サンクトペテルブルク、モスクワ、ウラジオストク、サンフランシスコ、北海道の函館。そして新潟から計30名の日本文化愛好家が夜十時に京都駅に集まった。
十日間の見事な紅葉の旅は順調にスタートした。
新潟-ウラジオストク便が運休し、急遽、成田空港着に変更を余儀なくされ、新幹線で京都に向かう組。関西空港から京都へ向かう組。新潟から京都に向かう組などが深夜、京都駅に全員無事に集結する。
移動は大型バスで蒲鉄トラベル村松支店の最新型バス。そして運転が最高の運転手さんにより長期間、誠に快適に移動することができたのである。
初日の宿泊は明智光秀の居城があった亀岡市の湯の花温泉。ここで3泊する。和室と設備の整った温泉で日本スタイルを体験してもらう。
この日の夜半には京都は雨模様になった。
翌日の天気予報も雨マーク。
二日目、朝4時ころには目を覚まし、テレビの気象予報の雨雲の動きを何度も観察する。午前中の高尾一帯は雨は降らないと予想し、予定通り三尾散策を決行する。
予想は的中した。雨上がりの朝、しっとりと露をまとった紅葉がその枝を下げ、間近で艶やかで見事な色彩を放つ。石段も庭苔も何とも言えない風情を醸し出している。
こんなにも色濃く艶やかな紅葉は今まで見たことがあっただろうか。
山々には雲が湧き、水墨画のなかの極彩色のモミジは、緑、黄、橙、深紅のグラデーション。
- 栂尾,槇尾,高雄を行く
高山寺、西明寺、神護寺まで、清滝川沿いを凛とした空気の中気持ちよく散策を満喫した。
午後からは大徳寺に行く。予想通りここで雨になった。
塔頭のひとつ、大仙院に入る。室町時代の名園である。雨が庭石を瑞々しく浮き上がらせ、よりモノトーンの枯山水の世界を際立たせる。(寺内は撮影禁止)
幸いにも十日間の旅行の間、雨が降ったのはこのときだけ。
遠く世界の各地から来られた異国の人々を歓迎するかのように天の采配としか思えないような素晴らしい景色が十日間続くのである。
三日目、朝の嵯峨野はすでに大渋滞。菊を見たいとの希望で大覚寺の嵯峨菊を見に行く。
- 大覚寺の嵯峨菊
嵯峨菊は、大沢の池に自生していた野菊を気品ある王朝風に仕立て「天地人」の七五三作りの伝統を今に伝えていて、11月中一般公開されている。
- 妙心寺の塔頭、退蔵院
大覚寺から移動中急に「妙心寺」に行きたいということになり、退蔵院に入る。狩野元信の庭、昭和の名園「余香園」を見学する。
遅い昼食のあと、後水尾天皇が修学院離宮を造営する前に、比叡山を借景とする適地に自ら築かれた「圓通寺」に行く。
部屋の仕切りが額縁となり見事な紅葉と苔の庭の遥か向こうに比叡山。天皇の美的感覚が偲ばれる名園である。
- 圓通寺
- ライトアップの永観堂
夕方、南禅寺からライトアップのモミジの「永観堂」へ。まだ明るい内から見物客があふれている。
さすがに紅葉の名所と謳われる場所だ。我々は長蛇の人の列をしり目に団体入口から待つことなく入ることができた。
近年のライトアップ技術は京都を彩る優れた芸術となっている。雅楽の演奏のアトラクションがその雰囲気を一段と高めてくれている。
四日目、三尾、永観堂とならび称される紅葉の名所が京都最後の見学場所となる「東福寺」である。
朝から通天橋は超満員。その紅葉の見事さは言葉では言い表せないくらい艶やかである。上天気で太陽の光線がさらに美しさを際立たせている。
方丈の重森三玲の庭園も堪能する。
昼からは奈良に移動して、春日大社、若草山、東大寺周辺を散策する。時間を気にせず自由に歩いて見学や撮影をしてもらう。
夜は新日本三大夜景と称する若草山の展望台へ。奈良盆地、遠く京都の夜景も見えるという圧倒的な光の絨毯が眼下に広がっていた。
五日目、午後と午前の予定を変えて、まず室生寺、そして長谷寺へ行く。
室生寺も長谷寺もその紅葉の見事なこと。清冽な室生川では亀や魚を見つけ大はしゃぎ。ここでは制限時間など設けないことにした。たっぷり色鮮やかな紅葉を存分に楽しんでもらう。
ここでも、自前の天気予報が的中。長谷寺を出たとたん太陽が隠れた。太陽が出ているのといないとでは天と地ほどの紅葉の印象が違う。
遅い昼食のあと、法隆寺に行く。世界最古の木造建築。宝物殿に聖徳太子の住い跡の夢殿。閉館ぎりぎりまで飛鳥の時間を楽しんだ。
六日目、廻りきれなかった「興福寺」を訪ねる。藤原氏の菩提寺である。仏像ブームの火付け役となった「阿修羅像」を見る。意外と小ぶり。
猿沢の池では五重塔が水鏡となってきれいに写っていた。
ここが奈良見物の最終地。
それから一路、東京に向かう。高速道路も四日市経由の最短距離で名古屋へ。
そして念願の富士山が見えだしたころは疲れも吹っ飛ぶほどの大興奮。
山容が近ずくにつれ巨大な山魂となって迫り、バスの右に左に前方に顔を出す。おかげで長時間の移動にもかかわらずあっけなく東京都内に入ったという感じだった。
牧ノ原の広大な茶畑の茶の木の花が一面満開だったのもすごく印象的だった。
都内ではお台場の夜景を楽しんでからホテルに着いた。展望のよい22階に宿泊していただく。
七日目、この日は江戸東京博物館を見学してから三班に分かれて行動することになった。
撮影・買い物ツアー。浦安のシルク・ドゥ・ソレイユ見物。国立近代美術館その他の見学コースである。
夜は、隅田川の屋形船を貸し切りにして大宴会。カラオケはロシアでもブームらしい。
皆さんから、ホテルも旅行計画も大変喜んでいただいた。
私自身が、時間に制約される旅行は嫌いだし、見たいものはじっくりと時間をとる。ロシアの人たちにもそういう点でストレスを与えないよう留意した。
- 国立近代美術館
八日目に帰国する人、九日目に帰国する人。十日目に帰国する人。成田空港から、関西空港から無事に帰国して行った。
運休してひと月もしない内に、新潟ウラジオストク便が再開したという連絡が入ったのが一昨日のことだった。
今回の旅行は私にとって、久しぶりの奈良でもあった。
そしてどこも素晴らしい自然と生活の場との調和を見せてくれた。
類まれにみるとよく表現されるが、この日本の美しい自然を守り育む努力はいかばかりであろうかということを思うと深い感謝の念を禁じえない。
多くの人々の長年にわたる努力の積み重ねが感動を呼ぶ現在の名所といわれる空間を創り出してきた。
日本のあらゆる芸術がこの美しい自然があってこそ生み出されてきたと言っても過言ではないだろう。
それらは時代の感性によって研ぎ澄まされ洗練されたものが伝統文化として残っていった。
伝統文化も自然も守り、そして創り出す努力を怠った時衰退してゆくのだと思う。
日本の至宝というべき世界遺産や日本の自然美。飛鳥時代から現代の東京までの1500年に及ぶ日本の歴史を訪ねた今回の旅を外国の人々にはどんなふうに写ったであろうか。
- 京都、奈良の紅葉
- コメント ○ご自由にお書き下さい。 (認証コードをお忘れなく!)
a:6172 t:1 y:1