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ヘールポップ彗星

  天体観察                果てしないロマンが宇宙にある!

 ヘールポップ彗星

   1997年3月4日(水)~5月1日(金)            spectator:4168

  • 加治川河口付近の砂丘にて

ヘールポップ彗星 

阿賀野川岸より 

年の百武彗星に引き続き、人類が目撃した彗星の中でトップクラスの超大型彗星がやってくるということで大きな注目を集めたヘールポップ彗星が近づいてきた。

1995年7月にアメリカのアマチュア天文家のアラン・ヘール氏とトーマス・ポップ氏が発見。

ハレー彗星よりやや大きい平均直径10~20kmの氷の塊で、同じ距離で比べてもハレー彗星の100倍も明るいという驚異的な数値を示していた。

地球最接近が3月22日で約1億9700万kmかなたにあり、太陽最接近が4月1日との情報を得ていた。

彗星は、その核の80%は水。つまり氷の塊で、残りは一酸化炭素と二酸化炭素が20%、これに微量の炭素、酸素、窒素などの化合物が含まれ、それにちりが混ざっていて、汚れた雪だるまとも呼ばれる。

左に流星が! 

彗星の特徴は2種類の尾にある。青いいイオンテイルと白いダストテイルである。

彗星に含まれる一酸化炭素、二酸化炭素のガス分子は核から遠ざかるに従ってイオン化され、太陽から噴き出す高エネルギーの荷電粒子で毎秒100kmという猛烈な「太陽風」によって吹き飛ばされ、青く長い尾を作り出す。

これが、イオンテールで常に太陽と正反対側に伸びる。

これに対して、核からガスとともに飛び出したチリは太陽の光の圧力を受けて黄色がかった白いダストテールを作る。

この流れる速さはゆっくりなので、帯状に広がってかなりの幅をもち、長さや形が大きく変化することがある。

さて、どれだけ大きく見えるのだろうか。期待が膨らんだ。

加治川近くの砂丘にて 

3月4日の早朝、期待を胸に待ちに待った撮影に行く。阿賀野川を前に、カメラ2台をセットして雲が過ぎるのを待つ。

ガイドブックで位置を確かめていたときである。「いた!」

「あれか!」というのが第一印象だった。白鳥座のデネブの下、明らかに彗星独特の白い尾がみえた。

 思ったより小さい。

早暁の阿賀野川を景色にして撮影した。(上から二番目の写真)

しかし、400mm望遠レンズで撮った写真は全部蛍光灯のように光が伸びた状態。百武彗星と今度の彗星では条件がまるで違う。

佐渡上空:夕方は横に見える 

そこから、粘り強く失敗の改善作業を積み重ねることになった。

とにかく夜中晴れていれば1時でも2時でも飛び起きて、深夜2時から3時の1番空気が澄んでいる時間帯、また、夜と朝の間の情景、夕方と夜の境の情景をねらって走り回った。

県内はもとより、北は山形県の鶴岡市の山の中から、南は沼田市、西は上越の山奥まで足を伸ばして撮影した。

いい撮影条件の場所はなかなかない。藪を分けながら行く全く知らない山道も車にナビがついていたので安心だった。

へールポップ彗星は、期待どおりの大彗星となった。

撮影方法も工夫を重ね続けた。まず、データを記録、ラジオの音と撮影時の声を音声レコーダーで記録。

三川村峠にて 

整理する時に、時報の音から計算して正確な撮影時間と露光時間のデータを残すことができた。

これによって試行錯誤のなかからより精度の高い方法を選んでゆき、東西南北や天頂での露出時間の上限の違い、レンズの種類やフィルムの種類に応じた独自の撮影用データマニュアルができた。

レンズも単焦点ニッコールレンズ 50mm F1.4を基本とし、フィルムはISO800から画質がきめ細やかになった高感度のフジスーパーHG1600に換えていった。

さらに精度を上げるために、レリーズは使うがシャッターの代わりに黒いボードを使った。明治時代初期の写真機のように、それで光を取り込んだり遮断するのである。

赤谷にて 

これにより、一眼レフ特有のシャッターを切るときのミラーのスイングによるわずかなブレもおさえることができた。

慣れとはすごいと思うのだが、暗がりで時計は見れないので、声を出して時間を数える。そうしているうちに1分を計るのに2秒の狂いもなくなっていた。

そして、失敗のない鮮やかな星野写真を撮ることができるようになったのである。

実は、最初の日の撮影でメインカメラで撮った写真は全滅だった。サブカメラで撮った数枚の内の一枚が最初に撮れた写真である。(上から2番目の写真)

何事も自分が目指すことを得るには、失敗も成功への一過程であり、そこから試行錯誤を繰り返し創意工夫を積み上げてゆく根気があるかどうかで決まるということを今回の撮影で改めて学ばせてもらった気がする。

970330 Δ1.34AU r0.91AU -1.8AUC

    ヘールポップ彗星 970330 Δ1.34AU r0.91AU -1.8AUC

  • 地球と太陽の距離約1億5千万kmを1天文単位とし1AU と書く。
    略号の Δ は地球と彗星の距離、r は太陽と彗星の距離。AUC は光度を表し、-2,0+5log Δ+10log r で計算。


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