いけばなの世界から見えるもの!人、自然、宇宙、存在…

月刊「嵯峨」0109

 出版・報道              マスメディアの印象力!

 月刊「嵯 峨」寄稿

    2001年8月30日(木)                                  spectator:2549

月刊「嵯峨」9月号 

国の嵯峨御流の会員のための機関誌は、嵯峨御流を学ぶ者にとって最も重要な情報源である。

一読しているとその地域の活動状況を知ることと、懐かしい友人の近況も知ることができる。

私は、初めてエッセイという記事を書いたのがこの嵯峨誌であった。

自分の人生の目標が定まった時期とも重なっていた。

上野 恒洲 

このころはひとつの迷いがあった。それを断ち切ってくれたのが過酷な自然に身を投じ、自分を鍛え直すきっかけとなった登山だった。

年々、目標が高く感じられるプレッシャーから逃れたいと思ったときに、果敢に挑戦して得られる大きな代償を教えてくれたのが厳しい山行きだった。


そのことを素直に書いたのがこのエッセイである。



 山に学ぶ

新潟司所長 上野 恒洲

 午前三時、真っ暗な深い谷を抱く黒い山々を横目に、谷川連峰の稜線をあえぎながら頂上を目指す。

頭上に浮かぶ雲が、瞬く間に濃い紫色からピンク色そして青白い色へと一変させていく。

 遥か地平線では雲の縁が細い金色の帯のようにきらめき、やがて雲の間から茜色の太陽が昇ってくる。

すると、空気が動き出しガスとなって湧き上がるなか、見渡す雲海の上をいく筋もの太陽の光が走り、

荘厳なご来光の変幻する彩りに世界が包み込まれていく。

 今年の梅雨の隙間をついて登ったこの日の山頂で見た光景は、贅沢にも私と家内の二人だけが招待された雲上の特等席となりました。

 新潟市において全国に先駆けて、いけばな嵯峨御流と「京・大覚寺展」が開催されたのは、亡き母のあと、当司所を引き継いで四年目の平成四年、秋口のことでした。

一木一草、一輪の花に宿る命のエネルギー「心粧華」との強烈な出会い、それは深く心に焼きつく花の「命」のかたちでした。

 その翌年、月刊「嵯峨」の六月号に、山嫌いのはずの家内の心をとりこにした写真「乗鞍山頂の黎明」が掲載され、夏をまちかねるようにして初めて家族4人で乗鞍岳に登りました。

 そこでのまばゆい光景の中に小さな自然の「心粧華」を見つけます。

 なびくにまかせた「才の花」岩の割れ目にひっそりと咲く「祈り花」

 以後、私たち二人の心を魅了して離さない命輝く孤高の花たちとの出会いがはじまったのでした。

 以来五年、心ひかれるまま三千㍍級の山岳や新潟周辺の花の名山、そして四季の尾瀬へと年間二十五日をカメラとビデオを携えて山行きを繰り返しています。

 時を同じくするように、そのころから多くの人たちとの出会いも始まりました。

ロシアやアメリカへの海外友好親善としていけばな展を企画し開催したことや、十一流派の賛同を得て自然保護を訴えたり、

阪神淡路大震災などの救済をテーマにして二回の開催となった「伝承のいけばな生花展」

 さらに、新潟市との共催で華道、茶道、邦楽など50近い団体による「新潟市民伝統文化祭」の設計を担当、

会場の六階に三室の茶席と華席を融合させるため高さ七㍍の孟宗竹を百八本を設置したり、茶道、華道、邦楽が共演する

ステージの企画、舞台設計と総合演出もさせていただきました。

 年々、人の輪が広がるとともに、目標も高く険しく、未踏の山に抱く想いに似たものを感じでいます。

 最近、山に登るとき、その苦しみ事態を楽しんでいる自分に気付きます。登る山が高いほど、後にくる感動も大きいことを何度も味わってきました。

 そして、自分の体力に合った荷の重さを知ることや、何より謙虚に行動することの重要性など、学ぶところも数多くありました。

   
 また、高山植物のなかに、これ以上の白はないであろう鮮烈な白色に出会うことがあります。厳しく清冽な環境が作り出す色です。その一輪一輪が、心を粧う花となって記憶されていきます。

 自然との出会い、かけがえのない人々との出会いを大切に、これからも「いけばな」を通して「命のかたち」に触れる旅を続けたいと願っています。




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