妙高山・火打山
山と自然 一歩一歩登った山々に美の原点がある!
妙高山 標高2446m ・ 火打山 標高2462m
1999年10月8日(金)~10日(日) spectator:2861
- 妙高山の夜明け
私にとって妙高山は高校時代や長男と一緒に登った思い出深い山である。
今回で確か5回目となるが、強烈な出来事が待ち受けていた。
数日前にNHKの「小さな旅」で妙高山と火打山が紹介されていた。
登山者のなかには深田久弥が著した「日本百名山」の影響を受けた人が大勢いる。
妙高と火打は二つともその中に入っている。
しかし、まさかここまですごい状況になるとは想像することができなかった。
10月8日、自宅を午後6時過ぎに出発。登山口の笹ヶ峰には午後9時過ぎに着いた。
いつものように車の中が寝室になり、車中泊である。
標高が1300㍍の高原は空気も澄んで星空がきれいだ。
翌朝5時50分笹ヶ峰駐車場の登山口に立つ。空は快晴である。
色づき始めたブナの林のなかをゆっくりと登り始める。
小一時間ほどで黒沢に出る。橋は倒木を利用して架けてある。
そこから十二曲りの急登を登りきると木道が敷かれた針葉樹林のなかを行く。
見晴らしが利くところから北アルプスの山々が青空にくっきりと浮かんで見えた。思わず歓声がもれるほど美しい。
やがて富士見平に着く。ここが高谷池と黒沢の分岐で、ここから黒沢湿原に向かう。
- 黒沢池ヒュッテ
木道の脇は霜柱が立っている。湿原の草紅葉と山の紅葉のコントラストを楽しみながら午前9時半近くに黒沢池ヒュッテに着いた。
黒沢池ヒュッテは八角形のユニークな形をしている。
妙高山へ登る前に宿泊の手続きをしようとすると、帰ってきてからでいいという。
これが後でとんでもないことになるのである。
今日は妙高山を往復する。気持ちのいい紅葉のなかを大倉乗越に出る。
ここから見る妙高の頂上は、雲が取り囲むように湧いたなかに浮かぶ巨大な山塊となって目の前にある。大迫力だ。
いったん下って燕温泉の分岐のある鞍部を午前11時に通過、急登を30分ほど登りきると一つ目の頂上、北峰に着く。
そこから10分ほどで最高峰の南峰に午後12時50分に到着。
今まで何度かこの頂上に立ったが、初めて遠目がきく景色を見せてくれた。遥かに見渡す雲海の彼方に高い山並みが遠望できた。
山頂を後にして、また来た道を戻り、黒沢池ヒュッテに着いたのが午後4時だった。
なんと、受付するのに長蛇の列だ。小屋の周りにはもうすでにテントも張るところがないほど色とりどりのテントで埋め尽くされている。
「どこでも空いている所にテントを張ってください。」と受付で叫んでいるが、ないから聞きにきているのだろうに。
受付が終わるまでかなりの時間待つことになる。
なんで朝来たとき受付をしてくれなかったのかが怨まれる。。
この山小屋は定員60名ほどかと記憶するが、暗くなっても人の列が続き、夕食も5回待ちで食べ終わったのは夜の10時くらいだったと思う。
受付順に呼ばれてテーブルにつくのだ。それを取り囲むようにして順番が来るまで傍で立って見ている。
階段の一段一段から入口の土間に至るまで人で埋め尽くされている。息苦しくなるほどだ。しまいには山小屋の主人と客の喧嘩騒ぎまで起こる始末だ。
どうして寝るんだろうと思っていると、食堂のテーブルを窓から外に出した。我々のリュックも外に置かされた。
それでも、とても手足を伸ばして寝れる状況ではない。全員「体育座り」をさせられた。この状態と混雑では寝れるわけがない。
それにしても、週末と休日の最高の秋の登山日和とNHKの放送が影響してこれほどの状況をつくりだした。
中高年の登山ブームということを実感する。
約400人近くの登山者がはちきれるようにして山小屋にこうしている。映画、八甲田山雪中行軍の兵士が夜立ったまま寝る不気味なシーンと重なった。
一人がトイレに行くのに外へ出た。また窓から帰ろうとしたがもう彼のいる場所を確保できる状態にはなかった。
標高2000㍍の秋の夜は平地の真冬と変わらない。彼はどうしただろうか。人ごとながら心配になった。
早く夜が明けないかとそれだけを願ってまんじりともしないそれは長い夜だった。
10月10日、5時24分。夜が明けきらぬうち早々と山小屋を出る。
撮影しながらゆくので後から来た人が追い越して行く。このときの挨拶が決まったように「ひどい夜でしたねー」「ひどかったですねー」だった。
- 天狗の庭から火打山頂を見る
茶臼山付近までくると妙高山の稜線の木々が赤く輝きはじめた。ご来光だ。今日も素晴らしい天気になった。(トップの写真)
- 北アルプス穂高連峰と槍ヶ岳を望む
北アルプスの峰々が信じられないような近さに見える。この秋の清涼とした空気感がたまらなくいい。
高谷池に着いたのが午前6時47分。
日が当っている所は草紅葉に照り輝き、日陰の草原は一面、霜で真っ白にお化粧したかのような美しいコントラストを見せる。
- 火打山山頂より富士山を遠望する
ひと登りすると、天狗の庭に着く。目の前には火打山や焼山の秋色に染まるパノラマが広がった。池塘が水鏡となって逆さ火打が美しい。
7時50分、少し高度を上げたところからの北アルプスの展望がすばらしい。ここで朝食をとる。
さすがに寝不足でシンドイ。ここからはリュックをおいて火打山の山頂を目指す。
- 火打山頂より焼山を見る
最後のつづら折りの登りが辛かった。
午前9時35分。ようやく火打山の頂上に立った。
佐渡が見える。魚沼三山が見える。クジラの背のような苗場山。尾瀬の至仏山や燧ヶ岳。そして北アルプス、南アルプスに並んで富士山もクッキリ見える。
目の前には溶岩流の爪痕も生々しい焼山が圧倒的な存在感を見せ、その先が糸魚川そして日本海である。
飽かずにこの大展望を楽しんだ。
大自然は至上の芸術である。人知の及ばない偉大な力が働いているとしか思えない。
高い山に登るほど、気分が晴れ晴れする。身体中の細胞が気圧の変化で深呼吸するせいなのかもしれない。
何か大きな行事のあと、疲れは山に来ることでいつも癒されている。
- 池の平のいもり池と妙高山
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