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七夕10

 いけばな歳時記            季節の節目に出会う花!

 七夕の夜に

   2010年7月7日(水)                   spectator:6058

七夕飾り

七夕飾り

七夕飾り

夕は「五節句」のひとつである。

日本では、古より農耕の節目節目に神に「節目の供物」を供えてきた。

それが「節供」になり、やがて「節句」に変わった。

1月7日の「人日」(七草)の他は陰陽思想の陽の数(奇数)が重なった月日が「節句」となっている。

(陰陽思想では奇数は生の数。偶数は死の数となる)

江戸時代に描かれた織姫と夏彦

奇数を重ねることで健康や繁栄への願いが込められているのだろう。

季節の変わり目の節句の行事には花とのかかわりが深い。

3月3日ひな祭り(桃)、5月5日子供の日(花菖蒲)、7月7日七夕(竹)、9月9日重陽の節句(菊)。

七夕に用いるのは竹。その笹の葉は精霊が宿る依代である。

2000年前の漢の時代に中国で初見された1年の内、この日しか逢えない織姫と夏彦(彦星)の伝説は語るまでもないが、中国では後に機織りの名手の織姫にあやかろうと「乞巧奠(きっこうでん)」という行事が生まれ、白鳳時代までに日本に入って来たと思われる。

それが日本古来の先祖を祀る祭や仏教の「盂蘭盆会」などと習合して「七夕」の節句となった。

日本での「たなばた」という言葉は、天武・持統天皇時代より書かれた日本最古の書である「古事記」「日本書記」「万葉集」の一群のなかにすでに出てくる。そして、次の奈良時代には宮中で七夕行事として行われていたのである。

七夕飾り

広く庶民が七夕祭りをするようになったのは江戸時代になってからで、以後、庶民の習い事の願掛けとして全国で広がりをみせてゆく。

さかのぼって、室町時代、足利義満は唐物(掛け軸や陶磁器)志向が強く、今でいうブランド品の収集家として豪華な唐物の展示会「法楽」を催し、連歌や酒興の宴を開いた。

やがて、高価な唐物の花瓶には花がいけられるようになり、その花の豪華さも競うようになっていく。

これが、7月7日に定例的に開催されるようになり、七夕法楽(しちせきほうらく)と呼ばれるようになり、その席には、貴族、僧侶、武士、そして庶民までも花をいけている。

この七夕法楽でのいけばな展が盛んになり、女性の花上手が出て珍しがられたりして、いけばなの発展が急展開してゆくのである。

孫の義政の時代、書院造りの建物ができ、近習の同朋衆によって部屋の飾り方のマニュアル化が進み、いける花に規範を伴った「たて花」と自由に生ける茶礼などに用いられる「いけはな」の様式ができる。
 以後、いけばなの歴史は規範と自由が交互に姿を変えて表舞台に現れてくることになる。

七夕対船

嵯峨御流の伝花に「七夕対船」の生け方がある。右の牽牛星(彦星)の船には白い願いの糸を流し枝に二本結び、左の織姫星には、白、紅、萌黄、黄、紫の順に流し枝に結ぶ。

二艘の船がお互い向かい合うようにして吊っていける。天の川の真ん中で一年に一度の逢瀬をいけるのである。

旧暦の7月7日は必ず上限の月(半月)となり、ちょうど船の形に見立てることができる。

美しい糸を結ぶのは、中国の南北朝時代、七夕のとき7本の針に美しい彩りの糸を通し、針仕事の上達を祈ったことのなごりであろう。

新暦での七夕は梅雨の最中。この日は曇りや雨の方が多い。そんなところから七夕の日の雨のことを「催涙雨」「酒涙雨」といって織姫と夏彦(彦星)の流す涙といわれている。

旧暦の7月7日は、今年は新暦では8月16日になると国立天文台は公表している。

夏の大三角形

織姫はこと座の純白の0等星の「ベガ」。彦星はわし座の青白い1等星の「アルタイル」。天の川を挟んだ二つの星の距離は約16光年。

光の速さ(30万km/秒)で16年もかかる距離にあり、ちなみに地球からは彦星まで17光年、織姫までは約25光年の距離にある。

伝説では、この日雨になると天の川にカササギが飛んできて橋を架ける。雨になっても逢うことが出来るこの橋はタイムトラベルの装置なのかもしれない…

夏の夜空には、「ベガ」と「アルタイル」そして、はくちょう座のしっぽの「デネブ」が月が隠れる深夜、クッキリ見えてくる天の川をはさんで「夏の大三角形」をつくり、ひときわ際立って天頂に輝く。


時代が変わっても、伝説のような夢のある話はこの先も伝承されてゆくだろう。

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